第30期故郷創世塾で学ばれた福田充男さんの論文「農山村の経済発展プロセスに関する研究」が、『経営哲学』第20巻2号(2024年3月)に掲載されました。

【論文要約】
 本研究の目的は、補助金に頼らずに自主財源を築いて地域づくりを展開したことで知られる鹿児島県鹿屋市柳谷地区(以下、やねだん)における地域づくりの最初の10年間(1996-2006年)に実施された5つのイベントを、福田(2022)の地域づくりモデル(以下、「福田モデル」)を用いることで、住民起点で草の根的に推進された「農山村における経済発展のプロセス」について考察することである。やねだんの事例は、住民の当事者意識醸成を促す地域外からの関与がなくても、住民が地域づくりを我が事として受け止め、自律的に関係を築き、課題や危機を認識して会話し、対応策を実践するだけでなく、自前の地域づくり理念を形成して浸透させるという好循環を幾重にも展開することができるという可能性を示している。福田モデルは、地域内主体間の「(1)関係」深化による共同の発展、自由闊達な「(2)会話」によってもたらされる内省を基礎とした住民自身の改革案策定、住民の共闘という「(3)実践」をくぐり抜けることによる独自の物語の紡ぎ出し、次の危機対応の基礎となる「目指すべき理念」の新たな「(4)掲揚」、からなる四つの行動ステージの循環を素描する。そして、その四つの行動ステージを、Senge(2006)の五つのディシプリン(「チーム学習」「システム思考」「メンタルモデル」「自己マスタリー」「共有ビジョン」)が促進すると仮定している。やねだんの事例は、地域づくりプロセス循環の各段階に応じたディシプリンが機能したことで発展したと解釈することができる。

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福田充男

株式会社Bonton代表取締役、北海道文教大学客員教授、園田学園女子大学つながりプロジェクト担当講師、名桜大学共同研究員。

関西学院大学大学院修了後、フルブライト奨学金を受けて渡米し、フラー大学院大学博士課程修了。
博士(Intercultural Studies)。
総務省「地域人材ネット」登録者(地域力創造アドバイザー)、内閣官房・内閣府地方創生専門人材(市町村長の補佐役)。中小企業庁起業家教育協力事業者。 

【地域づくりに関わる主な実績】
2011年の東日本大震災で津波被害を受けた気仙沼市の地域住民が取り組んだ福祉事業を支援し、10年間で、ゼロから段階的に六つの事業を創出していったところ、経常収支が1億円超に拡大し、20人の雇用が創出されました。2012年には、兵庫県伊丹市の「伊丹阪急駅東商店会」の会長に就任して中心市街地活性化を推進した結果、当時26店舗だった商店街加盟商店が50店舗以上に倍増しました。2013年に沖縄県の離島に所在する観光業者の経営ブレーンに就任しましたが、2016年にその中間支援組織が「第3回・ディスカバー農村漁村(むら)の宝」に選定されました。2013年に、NPO法人「教育政策ラボラトリ」を創立し、全国の約2千人の教員・保育士・保護者・学生等に実践的な子育ての仕方を指導しました。また、沖縄県の小学校で児童対応の仕組みづくりを支援したところ、暴力的な問題事案が半減し、職員のストレス値が30%低減しました。現在は、沖縄県名護市と教育アドバイザー委託契約を締結しています。
「JDINメソッド」開発者。日本コーチング教育振興協会理事。組織・人材開発・起業支援・自治体支援・コーチングのスペシャリスト。ジャパンビアソムリエ。著書・論文多数。